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カフェレストランで紅茶とサラダを食べた私と遥子は、そのまま一緒にアパートへ帰宅した。
「お酒でも飲まない?」と遥子に誘われたけれど、その時は飲む気になれなくて。
シナリオの新作もどんどん書かなきゃいけない時だし、一人になりたかった。
遥子とはカフェレストランで2時間以上も長々と話し込んだ。
話の最後の方は、遥子の愚痴ばかり。
「私には何もない」
「沙織が羨ましい」
そんな言葉を繰り返す遥子に対して、気の利いた励ましもできなくて。
無力な自分を感じて疲れてしまい、一人になりたかったのだ。
それに……。
遥子は私のことを「羨ましい」と言ってくれたけれど、孝一を失った自分は幸せなのだろうか。
シナリオが順調だから救われているけれど、ずっと想い続けた恋は失った。
恋とは無縁な生活――。
そんな日々を想像すると、どんなにシナリオが順調でも、女としての淋しさは消えない。
私が書き上げた企画書とシナリオを、後藤プロデューサーは褒めてくれた。
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