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今さら孝一を頼っても、無理だと思うから……?
これ以上、恥をかいたり傷つくのは嫌だから……?
自分でも理由は曖昧だった。
曖昧だけど、“孝一には話せない”という意志は明確だった。
サンドイッチを食べ終え、ミルクティーも飲み干して喫茶店を出ると、あんなに激しかった雨はやんでいた。
顔を天に向けると、白い雲の切れ間から青い色さえ見ることができた。
突如として、私の中に強い感情が沸き上がる。
産みたい――!
それは感情というより、本能に近いのかもしれない。
産みたい。産みたい。産むんだ……。
家に着く頃には、その気持ちは強固なものになっていた。
迷いも吹っ切れていた。
ある程度の貯金はあることや、託児所の世話もしてくれる夜の仕事に当てがあったからかもしれない。
だけど一番は、孝一の子供だからこそ産みたかったのだ。
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