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可南子にも本当のことは言えなかった。
「どうして実家に戻るんですか? 留美さん、前に言ったじゃないですか。『当分この会社にいたい』って」
「だって、その頃とは状況が違うもの」
可南子はハッと気まずそうな顔をして言う。
「そうでしたね……。社内恋愛の真最中と、別れた後じゃ気持ちが変わって当然ですね。ごめんなさい、鈍感で」
「ううん、いいのよ。私も可南子ちゃんと離れるのは淋しいわ」
しんみりとなった雰囲気の中、私はアイスコーヒーのストローを啜る。
可南子はコーヒーフロートのアイスクリームを、スプーンで突付きながら尋ねてくる。
「実家に戻ってどうするんですか?」
「お見合いでもしようかな。でもまだ決めたわけじゃないの。もしかしたら留学するかも……。とにかく気持ちを切り替えたいのよ」
私は笑顔を作って明るくとぼけた。
「留美さんの幸せを祈ってますよ。孝一さんより素敵な人も見つけて下さいね!」
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