留美の想い

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私は「ありがとう」と答えながらも、複雑な気持ちだった。 ――そんな人、見つけられないわ……。今でも彼が好きなんだもの。 本音を晒け出せたらスッキリするのかもしれない。 だけどやっぱり言えなかった。 誰かを巻き込んだり、利用したり、心配させたり…… そんな駆け引きや甘えた行為は二度としなくない。 自分の想いは揺るがなかった。 私はお腹の子供と二人で強く生きていく。 この子がいれば、私は強くなれる。 5月末日、私の退社日には同じ部署の人たちが送別会を開いてくれた。 みんなからの花束まで貰った時には、涙が出そうになって。 あらためて恵まれた職場だったと実感する。 この会社を紹介してくれた沙織の顔が浮かび、初めて感謝の気持ちが生まれた。 6月と7月は身体を労わりながら、のんびり過ごした。 季節の変わり目は無理をせず、元気な子供を産むことだけを考えた。
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