待つ女、誘う女、奪う女。第21話

留美の想い

自分が妊娠に気づいたのは２月だったこと。

そういった事実を、なるべく感情を込めずに淡々と打ち明けた。

「孝一さんは知らないんでしょ？　どうして伝えないの？」

遥子が飛びかかりそうな勢いで声を上げた。

沙織は苦悶の表情を浮かべ俯いている。

「伝える気持ちになれなかったからよ。一人で育てようと思ったの」

「そんなの無茶よ！　子供がかわいそう。留美だってメチャクチャ苦労するじゃない」

遥子がヒステリック気味に叫ぶ。

「無茶とか、かわいそうとか、決めつけるのは止めて！　自分の考えを押し付けないでよ。私なりにちゃんと考えて決心した事だから」

私は諭すように言い放った。

「来年の６月からの仕事や託児所だって決めてあるわ。何の計画もなく無茶してるわけじゃないの」

遥子は何も言えなくなった。

沙織はショックが大きいのか、ずっと下を向いて黙ったまま。