240人が本棚に入れています
本棚に追加
「今でも好きで子供までいるなら、普通は結婚したいでしょ?」
「だって……」
私はいったん言葉を切った後、想いを吐き出すように伝えた。
「だって、孝一さんは私を好きじゃないもの。それが充分過ぎるくらい分かったから」
沙織と遥子は黙って耳を傾けている。
「無理して結婚してもらったって幸せになれない……。やっと悟ったのよ」
しばらく沈黙の後、沙織が反論する。
「欲しいものは奪うんじゃなかったの? 手に入れるんじゃなかったの? 留美はそういう生き方でしょ?」
沙織の言葉に対し、私は静かに答えた。
「欲しいものは、もう手に入れてるわ。私の身体の中で、ちゃんと生きてる。これからも、ずっと一緒に生きられる」
沙織は息を呑む顔をして、その後は黙ってしまった。
遥子も何も言えないのか、口を閉ざしている。
最初のコメントを投稿しよう!