留美の想い

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生理が二ヶ月以上遅れていても、先月まではどこか楽観視していた。 まさか妊娠などするわけない、と。 あの時、きちんと避妊だってしたのだ。 それに何よりも…… あんな嘘をついた私が、孝一の赤ちゃんを授かる筈がないと……。 嘘から出たまこと。 そんな諺じみた出来事など、自分の身に降りかかるとは思えなかった。 だけど二月に入って、日ごとに不安は募る。 “まさか本当に?”という疑念が強くなっていく。 その夜、夕飯を早々に切り上げた私は、インターネットで地元のレディースクリニックを調べた。 土日も診療している病院を見つけ、今週末には行く決心も固めていた。 土曜日の朝、平日と同じ時刻に目覚めた私は、カーテンを開けると溜息が出た。 どんよりと薄暗い空から冷たそうな雨が降っている。 二月の雨の日なんて、外に出る気持ちが鈍ってしまう。
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