留美の想い

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それでも私は病院に行くつもりだった。 明日だって雨かもしれない。 雪が降って、もっと寒いかもしれない。 それなら予定通り、今日行ってしまおうと思った。 トーストとコーヒーだけの簡単な朝食を済ませ、メイクは素顔に近い薄化粧に留めた。 ジーンズを穿きかけたけれど、病院での診察を想像してロングスカートに替えた。 寒さを防ぐ長めのダウンジャケットを着込み、マフラーも巻いて部屋を出る。 それでも外の寒さに身体は震えた。 ◆ ◆ ◆ 「おめでとうございます。妊娠三ヶ月ですよ」 40歳前後と思われるショートカットの女医さんは、私に優しげな笑顔を向けて言った。 「そうなんですか……」 私は診察室の白い壁を見つめたまま、ぼんやりと反応する。 医師に言われても実感が沸かなくて、事の重大さを受け止められずにいた。
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