留美の想い

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喜びの感情を表さない私を見て、医師は何かを察した顔で尋ねる。 「赤ちゃん、産みますよね?」 咄嗟に「はい……」と反応した私は、慌てて言い直す。 「あの、すみません。やっぱり少し考えたいと思います」 「そうですか」 「もちろん産みたい気持ちはあるのですが、実はいろいろと事情があって」 「分かりました。よくお考えになって下さいね」 医師の穏やかな口調に私は安堵する。 「もしも産まないのであれば、早めに対応した方がいいですよ」 こういうケースに慣れているのか、医師は淡々と事務的に告げる。 「その方が身体への負担は少しでも軽くて済みますから。遅くなって処置するのは大変ですからね」 「は、はい……」 私は弱々しく返事をして、うな垂れることしか出来なかった。
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