留美の想い

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――産みます! 今この場では、そんな決心と宣言は無理だったから……。 病院を出ると、雨は激しさを増していた。 時刻はちょうどお昼。 食欲はなかったけれど、カフェかどこかで休みたかった。 病院から少し歩くと幅の広い大通りに出た。 交差点を渡った角に落ち着けそうな喫茶店を見つけ、私は店内に入る。 壁際の席に腰を下ろし、若いウエイトレスにミルクティーとサンドイッチを注文した。 運ばれてきたミルクティーを飲み、口や胃の中に温かさが沁みわたると、冷静な思考が働き始めた。 ――どうしよう……。私はどうすべきなのだろう? 大きな選択肢は二つしかない。 産むか、産まないか。 産まないのであれば、医師に言われた通り早めに処置してもらうしかない。 もし産むのであれば、考えなければいけないことは山ほどある。
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