沙織の未来

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やっぱり孝一は優しいな、と思う。 自分が暑いのは我慢してでも、私に合わせてくれる。 孝一の長所を再認識すればするほど、切なくて胸がちくちくと痛んだ。 「暑くて喉カラカラだよ!」 アイスティーのラージサイズを手にした孝一が私の隣に座る。 二人で通りを眺めながら目を合わさずに話せるこの席は、今の私にとって好都合だと思った。 「で、どうしたの? 『なるべく早く話したい』って言われたから、午後ずっと気になってたよ」 「うん……。ごめんね」 私は今日のお昼休みに孝一へメールを送った。 “大事な話があるから、なるべく早く会いたい”と。 そうしたら孝一は“今夜でもいいよ”と返信くれたのだ。 「あのね、孝一……」 「うん」 私のただならぬ雰囲気を察したのか、孝一の相槌にも真剣さがこもっている。
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