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「やっぱり孝一の実家に行くことは出来ないわ。本当にごめんなさい」
今年のお盆休みに孝一が帰省する時、“一緒に来て欲しい”と誘われていた。
私を孝一の両親に紹介するために。
私はもちろん喜んで承諾していた。
有頂天だった。
留美が身ごもっていると知るまでは……。
「沙織、一体どうしたの? あと5日で出発だよ?」
孝一は動揺した声で言った。
「だから早く会いたかったの。少しでも早く伝えなきゃ!と思って」
「どうして? 何か急用でもできたの?」
「……」
すぐには言葉が出てこない。
黙っている私の顔を、孝一は心配そうに覗き込む。
「理由を教えてよ。もう親にも話しちゃってるし、楽しみにしてたんだから」
孝一の言葉が私の胸を締め付ける。
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