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苦しくて切なくて。
本当の事実と本心をすべて話せたら、どんなに楽だろう。
だけど、それは出来ない。
留美と約束したから。
留美が身ごもったことは言わない、と約束したから。
私は考えに考え、悩みに悩んだ末の言葉を口にする。
「気持ちが変わったの……。私、孝一と別れたいの」
「えっ?!」
なるべく冷淡に言ったつもりだった。
自分の決心が変わってしまうのが恐くて。
「……別れる?」
「そう」
隣にいる孝一の身体は小刻みに震えているのが分かる。
「沙織……本気で言ってるの?」
「本気よ。あと数年はシナリオに集中したいから、恋愛や結婚どころじゃないの」
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