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もちろん嘘だ。
シナリオの執筆を続けたいのは本当だけど、それと同じくらい孝一との結婚は望んでいた。
「別れなくちゃシナリオに集中できないの? 僕と付き合ってても、いや結婚しても、シナリオは続けていいんだよ! ずっと応援するつもりだし」
「うん、孝一の気持ちは分かってる。そこは感謝してる……。でも別れたいの」
「……」
沈黙が重く苦しかった。
「納得できないよ! 本当の理由は他に好きな人ができたからじゃない? 後藤プロデューサーのこと、ベタ褒めしてたし」
「違うわ! 他に好きな人なんて、いるわけないじゃない!」
思わず本音を叫んでしまい後悔する。
“他に好きな人ができた”とでも言った方が、別れるのは手っ取り早いのに……。
でも、そんな悲しい嘘だけはつけなかった。
私はゆっくりと言葉を続ける。
「よくよく考えたの。考えた末、やっぱり孝一と結婚するのは無理だと思ったの」
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