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「だから、どうして?」
「孝一は一度、私から留美に心を移したわ。留美は私の友達よ? そういう人と結婚するのは、やっぱり無理なの」
孝一は大きな溜息をつき、がっくりと項垂れる。
「そこは本当に反省してる。悪かったと思ってるよ。でも沙織は許してくれたと思ってた……」
「ごめんなさい。許せたと思ってた。だけど、やっぱり引っ掛かってたの」
私たちは再び無言になってしまう。
道行く若いカップルの楽しそうな笑い声が耳に入ってきた。
その笑い声を打ち消すように、私はきっぱりと告げた。
「孝一のこと、好きじゃないって気づいたの。一生付いていけるほどの気持ちじゃない、って。だから別れたいの」
半分は本音で半分は嘘だった。
本当は今でも好き。
ずっと一緒に居たい相手。
だけどやっぱり彼との結婚は無理なのだ。
孝一は何も言い返さず、黙って頷いた。
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