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「トモ!!ちょっとぉ。アンタ飲み過ぎよ、大丈夫?」
「あー。俺、連れて帰りますよ」
「郁真くん、頼んでいい?先にタクシー捕まえてくるわ」
「しっかりしてくださいよ、高野さん!帰りますよー」
ヒールの足音が小さくなって、肩を揺すられて郁真の声が聞こえる。
肩を掴む手を振り払えば、力の入らない足元は簡単にバランスを崩す。アスファルトに尻餅をついて、焦点の定まらないまま空を見上げた。
格好つけたはずなのに。
わかっていたはずなのに。
「な…、…………お…」
不意に零れたのは、愛おしい名前。
息が詰まりそうに苦しくて、顔を歪めた。
俺、何やってんだろ…
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