未来の君へ

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「こんなになるんなら、行くなって言えばよかったじゃない。格好つけて見送ったりして、馬鹿なんだから!」 花奈の頭のてっぺんのオダンゴが揺れる。 「まあまあ。本人が一番堪えてるんですから、塩塗らないでやってくださいよ。……じゃ、今日はお疲れ様でした」 郁真が俺の背中を押してタクシーに乗せる。言い足りない顔をした花奈に軽く手を上げて俺の隣に座った。 走り出した静かな車内で大きく息を吐いた。 行くな、なんて。 ……言えなかった。 クリスマス前に知らされた事実。 元々成績が良いのは知っていたし、大学進学は驚くことじゃなかった。 だけど… 菜緒が口にしたのは誰でも知ってる東京の有名大学の名前で。 既に特別推薦で合格が決まっていた。 何も聞かされていなかったことがショックで。 菜緒にとっての俺の存在がその程度だったってことが、信じられなかった。
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