未来の君へ

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行くなと言えば、行かずに済むような話じゃない。未来を決めた菜緒を惑わせるだけの言葉は言えなかった。 将来なんて、わからない。 永遠なんて、簡単じゃない。 大人になっていく彼女が、いつまでも俺だけを見てくれる自信も無かった。 東京に行ってしまうのに。 お互いを縛りつける約束に意味が見出せなかった。 それならば… 今は辛くても。 いつか…懐かしく話せるような「恋」にしたかった。 夢に向かって歩いていく、菜緒を応援したかった。 「合コン、セッティングしましょうか?」 シートに身体を沈めた郁真が笑う。 断れば執着しているように思われるし、即答すれば頓着なしに思われるだろうか。 「んぁ?まあ…」 言葉を濁す俺に、郁真は意地悪く笑った。 「この前、瑠衣さんが今はフリーだって言ってましたよ?」
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