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「じゃあね、バイバイ」
「おぅ、頑張れよ」
軽く手を上げて、その場から離れた。
本屋に入って直ぐに女性誌のコーナーで見つけた横顔。
通りすがりに頭を軽く撫でて、スポーツ雑誌を手に取った。
俺は格好ばかりを気にして、相手を理解しようだとか自分を理解してもらう努力をして来なかった。
もし、菜緒ともっと向き合えていたなら…
パラパラとページをめくりながら、さっき佳代ちゃんに告げた言葉を噛み締めていた。
思い出せば、愛おしさと悔しさの滲む恋だった。
好きだから、好きなのに。
自分たちでは流れに逆らうことが出来なかった。
ふと、女性誌のコーナーを振り返れば、『買ってくるね』とジェスチャーを送られて軽く頷く。
下手な駆け引きよりも、ただ気持ちをぶつけ合って。触れ合うことで満足して。
自己満足に振り回していただけで、彼女の望むような恋をしていたのだろうか。
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