マグカップでワインを

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私は、彼と同棲を考えている。 学生時代から付き合いを重ね、私は少しづつ私物を彼の部屋に置いていった。それに気づいた彼から提案された。 彼と色違いの歯ブラシ、昔から使っていた枕、スタンドミラーに化粧落とし。どんどん私の分身を置いていったのだから、わざとらしかっただろう。 それでも嬉しかった。 誕生日やクリスマスには、彼が顔を赤らめ、少し調子の外れた歌を歌って祝ってくれる。私は奮発して、チキンとワインを揃えてみたけれど、ワイングラスなんて洒落た物は無いから、お揃いで買ったマグカップに注いで飲んだ。 「雰囲気が無いね」 私と彼は同時に口を揃え、そして同時に笑った。 幸せな日々。 でも、他人だった二人、気に入らない事もある。例えば、彼はトイレの仕方が悪い。私は座って用を足して欲しいのに、彼はといえば、男らしくないという理由で立って用を足す。掃除をするのは、いつも私なのに。『彼を納得させるには、どうしたら良いか』そんな事を考えながら、私は床を丁寧に拭き掃除をする。問題を解決する前に、とりあえず目の前の問題を解決しなければならない。これは、私が生きてきて得た、一つの真理だった。 そして一番の問題は、私が妄想ではなく、本物の彼を今年こそ見つけなければならない事だ。
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