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「久しぶりだな…」
「やっぱり貴方だったのね、すぐに分かった…」
対峙する男と女は、少ない言葉を交わすと、黙ったまま見つめ合っている。
彼らは、小学校の頃の同級生で同じクラスに在籍していた。当時の男は、典型的な野球少年で、周りの大人からは打者として将来を有望されていた。片や女は、教室に育てた花を飾る様な少女であった。そんな二人が、ある日の放課後に話す機会があった。それは他愛の無い事ばかり、話題の中には、将来の話もあった。
そんな、過去の思い出。
沈黙を破る様に、男は口を開いた。
「俺は野球選手になってバンバン球を打つ。それでお前は…」
「花屋なりたかったのよ」
女は遮るかの様に、強い口調で言い放った。男は女を見据えて、溜息を吐いた。
「お互い、どこで捻子曲がっちまったんだろうな」
言い終わると同時に、男は右手に持っていた銃を向け、引き金を引いた。女の身体は後方に倒れ込むと、床に血が拡散していった。男は携帯を取り出した。何処かに連絡し、『始末した』という短い言葉を伝え、電話を切った。再び女に視線を戻し、男が呟いた。
「お前は芥子を育てて、俺は弾を撃つ。俺達は本当に、どこで…捻子曲がっちまったんだろうな…」
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