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目が覚めると、目の前に機嫌が取って置き悪そうな、黒目勝ちな目が見えた。
「…来てたのか、君」
Kは大欠伸をしながらそう言うと、ゆっくりと身体を起こした。まだ眠り足りないが、彼女が来ているからには仕様が無い。
「いつから寝ていたの」
透き通る声でそう問われ、Kは濃い茶色に染まった縁無し色眼鏡を掛けて、ガシガシと頭を掻きながらソファーを降りる。
「そんなことどうでもいいじゃないか。大事なのは今起きたということだろ?」
「確かにそうね。でもいつから寝ていたのかというのもとても大事なことだわ」
「…昨日の午後4時だ」
Kは観念したように気怠そうな声で返答した。台所まで向かうと、蛇口を捻って適当なコップに水を注ぐ。彼は今物凄く喉が渇いていた。
理由の一つは昨日の午後4時から水を口にしていない為。
二つ目は、彼女からの鋭い説教が降って来ることを知っているからだ。
「何度言えば分かるの、K」
息を深く吸い込み、彼女はKを睨んだ。
いよいよ来る。長ったらしい、それでいて論理的な説教が。中学二年生の少女に説教されるなんぞいい気はしない。
Kは立派な大人だ、社会人だ。性格はともかく。
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