プロローグ

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「貴方、自分が何歳なのか分かっているの? もう社会人でしょう? それなのに仕事もしないで4時に眠りにつくってどういうことなのよ。それに貴方とても臭いわ、お酒の匂いがする」 「ああ、昨日は一日ずっと一人で飲んでたよ。女の子に振られてね、ショックで自棄酒だ。君が慰めてくれる女の子なら僕はこんなにはならなかったろうよ」 Kは負けじと言い返した。再びボサボサの頭を掻いて、絨毯の上に勢い良く胡座をかく。カップラーメンのゴミやらで散らかったテーブルをしばし眺め、目的の煙草が目につくとすぐさまそれを手に取った。 「貴方自分がニートでインチキ探偵だってこと分かってる? お酒に入り浸っているのを私のせいにしないで。冗談じゃないわ。ちゃんとした就職先探しなさいよ」 「ヒステリーな母親みたいなこと言うなよ。君はまだ中学生だろ? 余計なお世話なんだ」 「余計なお世話とは何よ。私は貴方の為を考えて言ってるの。お酒は肝臓に悪いし、煙草は肺に悪い。やめてって言ってるのにちっともやめてくれないじゃない」 「こういうのは中毒なんだ、すぐにやめるなんて無理なんだよ」 「やめる気なんて無い癖に」 「やめる気はあるさ」 Kは立ち上がると、彼女の目の前まで近寄って彼女を見下ろした。 「君の為なんかじゃないけどな」 はっきりとそう言ってやると、彼女は鬼でもすくみ上がるような形相でKを睨み、やがてわざと足音を残して事務所を去って行った。 「…やれやれ、あの子の相手は疲れるな」 煙草を口にくわえ、紫煙を吐き出しながらKはぽつりと呟いた。
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