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「行ってきます」
真新しいドアを開け、見慣れぬ道を歩く。
俺の名は青山信吾
今日から県立天触(てんふれ)高校の1年生になる。
この町、天触市には1ケ月程前に母親と引っ越してきた。
高校までの道程は、まだ数回しか歩いていない。
しかし、周囲には俺と同じように高校に向かう生徒が歩いているので、迷子になる事は無さそうだ。
10分も歩くと、天触高校が見えてきた。
正門をくぐり、入学式が行われる体育館に向かう。
道の両側では、色々な部活が新入生勧誘に必死になっている。
しかし、俺は目もくれずに真っ直ぐ体育館を目指す。
俺は高校で部活をするつもりは全くない。
別に、運動が苦手って訳じゃない。
むしろ、運動全般は大得意だ。
中学での俺は、かなり優秀な陸上選手だった。
特に長距離が得意で、マラソンでは日本一に輝いた事もある。
まぁ、そんな事はどうでもよい。
俺は目立たず騒がず、普通の高校生活を送るだけだ。
「ちょっと、そこの君!」
肩を叩かれ、思わず振り向いてしまった。
俺の肩に手を置き、爽やかなスマイルを見せる先輩。
何故先輩と分かるかって?
学生服の襟につく襟章が三だったから。
一なら1年生、ニなら2年生だ。とても分かりやすい。
整った顔立ちに、絹のような黒髪。どこからどう見ても、美男子と言える。
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