4月

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「行ってきます」 真新しいドアを開け、見慣れぬ道を歩く。 俺の名は青山信吾 今日から県立天触(てんふれ)高校の1年生になる。 この町、天触市には1ケ月程前に母親と引っ越してきた。 高校までの道程は、まだ数回しか歩いていない。 しかし、周囲には俺と同じように高校に向かう生徒が歩いているので、迷子になる事は無さそうだ。 10分も歩くと、天触高校が見えてきた。 正門をくぐり、入学式が行われる体育館に向かう。 道の両側では、色々な部活が新入生勧誘に必死になっている。 しかし、俺は目もくれずに真っ直ぐ体育館を目指す。 俺は高校で部活をするつもりは全くない。 別に、運動が苦手って訳じゃない。 むしろ、運動全般は大得意だ。 中学での俺は、かなり優秀な陸上選手だった。 特に長距離が得意で、マラソンでは日本一に輝いた事もある。 まぁ、そんな事はどうでもよい。 俺は目立たず騒がず、普通の高校生活を送るだけだ。 「ちょっと、そこの君!」 肩を叩かれ、思わず振り向いてしまった。 俺の肩に手を置き、爽やかなスマイルを見せる先輩。 何故先輩と分かるかって? 学生服の襟につく襟章が三だったから。 一なら1年生、ニなら2年生だ。とても分かりやすい。 整った顔立ちに、絹のような黒髪。どこからどう見ても、美男子と言える。
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