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あの時渡せなかった恋文を。
俺は恋人はいなかった。いや、作らなかった。
俺の時間はあの時のまま進まない。
ふとした時に思い出す彼女を。
あの蒼白い顔を。
俺はポケットから携帯を出して妻に電話を掛けた。
「遅くなって、すまない。もうすぐ帰るよ」
見合いで結婚した俺は、愛する家族がいる。
それでも、今だに思い出す彼女を。
あの蒼白い顔を。
会社から見た曇り空には雨が降り出していた。
―Fin―
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