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「そんなことよりシェリア!大丈夫なの!?」
「うん……でも、魔物がまだ増え続けてるみたい。」
シェリアは後ろを見る。そこには尽きることのない魔物の群れ。デスバットが少しずつもれ始めている。
このまま続けていても、じきにこの門の前まで来るのではないだろうか。
「上等だ!」
「喜ぶな!」
メアが叱る。
バンは既に戦闘態勢に入っている。性格を知っているのでシェリアが不思議に思うことはない。苦笑いは浮かべるとして。
「そうだね……シェリアはこのまま回復に徹するべきだね。足りてるのかな?何なら僕も救護隊にまわるよ?」
「ううん、大丈夫だよ。」
「うん、わかった。任せたよ。」
水属性は光属性に並ぶ回復魔法がある。ウェルは自分も手伝おうかと聞くが、それは必要ないようである。
「行くぜ!!」
「馬鹿な威力の魔法で仲間を巻き込むんじゃないわよ!」
バンを筆頭に、三人は森林へと駆け出す。シェリアは微笑まながらその後ろ姿を見送った。
ーーーーーーー
「原因を探る?どういうことだ!」
「何の理由も無しに異種の魔物が徒党を組むわけないでしょ!それにそんな頭もない!」
王都西部。イリス達は王都の中央街に向けて走っていた。
「探るったってどうしろと!」
「西門にある監視塔はそんなに高くないの!だからたぶん、魔物の群れの原因はわからないと思う!」
「なーるほど~!もっと高い位置から見るってことだね!」
「ええ!」
西部住宅街を抜け、イリス達は王都の中心部に差し掛かる。そこでいったん立ち止まった。
「高い位置って……もしかして……!」
「終戦記念塔よ!世界一高いと言われる観光名所!」
疑問の答えが明らかになると、ヨナの顔は青ざめる。
「ちょ、ちょっと待って……あの塔を登るには地下通路を通らないと……!」
「通ればいいじゃない。」
「だ、だってあそこ暗いし……」
ヨナは元々怖がりだ。知らない人が怖いほどなのだから、その腰抜けぶりはかなりのものだ。
戦闘になると性格が変わるらしいが……。
「待ってイリス~。ただいま問題浮上中~」
「な、何よ…。」
「地下通路は鍵が閉まってるよ~?借りて来なきゃ~」
「うっ……そうだ……」
終戦記念塔は年の初めに毎年解放される。その度に地下通路は整備され、観光客が通って行くという仕組みになっている。
したがって、現在は閉鎖中だ。
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