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「これはフィジー鉱石だ。さっき船尾で多く引き上げられてたから思わず一つをもらってしまった。」
「物好きな野郎だな。普通こんなデカイの貰わねぇだろ。」
「馬鹿言え!」
「なっ!?」
バンは突然エルが大声を上げたことに驚く。
「これは別名『魚の寝床』って言ってな、触れてるだけで安らぎをもたらす精神安定剤になるんだ!穏やかな深海にしかないんだぞ!」
「う、うるせぇな…。」
「エル君、石が好きなんだね。知らなかった…。」
何を隠そう、実はエルは鉱石で物を作り始めて以来、すっかり石好きになってしまったのだ。
「酔い止めにちょうど良かったしな。」
「それ、ウェルに使わせないの?」
「いや、置く場所無いし、酔いが醒めて目覚めたら騒がしそうだからこのまま寝かしとく。」
「保護者みたいな言い分ね。」
エルの淡々とした言葉に、メアの頭の中にあった、ウェルの天使であろうエルのおぞましい姿は完全に消えていた。
「じゃあ結局俺らはウェルの見舞いに来たってことかよ。」
「なんだ、お前ら見舞いに来てくれてたのか?」
「ええ、シェリアが行こうって。」
「え!?そ、その……」
メアがシェリアの名を出すと、何故か本人は慌てふためく。
「ん、そうか。ありがとなシェリア。」
「う、うん…。」
エルは特に気にかけることも無い様子でシェリアに礼を述べた。
「………」
メアはその二人の様子を訝しむように見ていた。
「あ"~、体動かしてぇ……ダリィ、暇だ。」
「全力でガラの悪さ出してきたな。」
バンは本当に暇なようだ。こんな大きな船なら練習場の一つ有ればいいのにとは思うが、万が一の事を考えると、やはり海上を渡るものに備えるには危険性が高いのだろう。
「いっそ適当な魔物でも出てくりゃいいのによ。」
「ちょっとバン!そんなこと言って奴らが現れたらどうすんのよ!」
「うっ…!?わ、悪かったから叩くんじゃねぇ!」
メアはバンの発言に本当に怒っているようだ。平然とした態度をとっていても、やはり心のどこかにはまだ恐怖が残っているようだ。
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