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「魔物はアホだからわからないが、魔族が現れる可能性は限りなく低いと思うぞ。」
「えっ……?」
バンとメアがもめている間にエルが言葉を挟む。それを受けてメアは手を止めた。
「どういうこと…?」
「お前らも聞いていると思うが、スローラルから他三カ国にギルド員が派遣されることは知っているな?」
「あ…」
エルの言葉の真意に気付いたのはシェリア。
「この船に乗っているんだ…?」
「それも強さを誇るギルド員がな。名までは知らんが。」
シェリアはエルの言葉を聞いて顔を綻ばせる。安心したのか、大きな一息をついた。
「魔族には知能があったんだ。俺たちが船に乗る情報を手に入れているならギルド員のことも知っているはず。迂闊に手は出せないだろう。」
「よ、良かった…」
メアはぺたんとそこに座り込んだバンは気まずそうな表情を浮かべている。
「しっかし、強ぇ奴らがいて模擬戦もできねえとは…。」
「それだけじゃない。魔物が現れてもギルド員が瞬殺するだろうな。」
エルの言葉にバンは「えっ」と言葉をもらす。そしてエルと顔を見合わせ、
「「ハァ……」」
「なんでアンタら残念そうなのよ!!」
科学で象られた娯楽が少なく、魔法を使って楽しむ世界で魔法を使えないというのは確かにストレスが溜まるものかもしれない。
「あ。そういやお前ら気をつけろよ。バンはメイドを付けてないから良いが、あいつらの間で俺たちの私生活がネタにされてるらしいぞ。」
『えっ!?』
エルの言葉にシェリアとメア、そして何故か跳び起きたウェルはギョッとしたような表情を浮かべた。
「ちょ、ちょっとなんでそういうことを早く言わないのよ!アンタも危ないんじゃないの!?」
「俺の場合はメイドの方のネタが多いからな。脅しといたから大丈夫だ。」
「なっ!?こ、この変態!」
「は?おい待て!なに勘違いしてやがる!」
エルへの罵声と共にメアは慌てて部屋から出て行った。
「わ、私も…!」
「シェ、シェリア…?」
シェリアも珍しい程に取り乱し、慌てて出て行く。顔も真っ赤になっている。
(い、いったいどんな秘密が…?)
ごくりと喉を鳴らすエル。後でマリーに聞いてみようと密かに誓うのだった。
「ぼ、僕の私生活が…!」
「興味無ぇから。」
「ええ!?」
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