ドール

40/60
21846人が本棚に入れています
本棚に追加
/390ページ
「それにねー…イリス~?」 「なによ!?」 「監視塔に上ったとして、ここは王都の中心部。向こうが見えたとしても小さくて何なのかわかんないよ。」 「あ……」 イリスはマールに指摘されて初めて気付く。 「それにね~?」 「ま、まだあるの!?」 マールはさらに言葉を続けようとする。イリスは内心「もうやめて!」と思う。 「魔物の群れの原因がわかったとして~、それを誰に報告するの~?まさか、また王都の西部まで引き返して直接伝えに行くの~?」 「っ……」 イリスは閉口する。瞳は揺れ、鼓動が激しくなる。 「計画は立てないとー」 「お、おい、マールそこまでで……」 マールの追い打ちをかけるような言葉に、ロイドはまずいと思ったのか、やめさせる。 案の条、イリスは項垂れてしまった。 「…駄目ね……あたしって……」 「あー……」 ロイドはやってしまったと言わんばかりのに左手で顔を覆う。 「ミーシェも守れないで…勝手に諦めて…シェリアに元気付けてもらったのに調子に乗って…みんなのこと馬鹿にして……こんなことになって……」 「だ、大丈夫だって……!イリスは頑張ってるじゃねぇか!」 ロイドは落ち込むイリスに必死にフォローをする。しかし、イリスは今にも泣きそうな顔になっている。 「泣いちゃ駄目だよ、イリス。」 「え……」 突如、マールがイリスに真面目な口調で言葉を投げかける。この時のマールは真剣に話している証拠だ。 「泣きたいのはマール達の方だよ。イリスはマール達を見下してるもん。」 「……」 「お、おいおい!マール!」 さらにマールの追撃。ロイドはマールの予想外の行動に慌てた。 イリスがこうなったときは、元気付けるために皆で慰めるのが昔からの習慣だったのだ。 「今だけじゃない、ずっと悲しかった。魔族の一件があってからマール達には一切頼ろうとしない。それなのに、意識のないミーシェやほとんど関わりのないシェリアさんに頼ろうとするんだ。 きっと仲間だと思ってくれてないんだね。」 「ち、違っ……そんなこと……」 イリスはまた泣きそうになる。 「仲間じゃない」。今のイリスは何よりもその言葉を投げつけられるのが痛かった。
/390ページ

最初のコメントを投稿しよう!