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「それにねー…イリス~?」
「なによ!?」
「監視塔に上ったとして、ここは王都の中心部。向こうが見えたとしても小さくて何なのかわかんないよ。」
「あ……」
イリスはマールに指摘されて初めて気付く。
「それにね~?」
「ま、まだあるの!?」
マールはさらに言葉を続けようとする。イリスは内心「もうやめて!」と思う。
「魔物の群れの原因がわかったとして~、それを誰に報告するの~?まさか、また王都の西部まで引き返して直接伝えに行くの~?」
「っ……」
イリスは閉口する。瞳は揺れ、鼓動が激しくなる。
「計画は立てないとー」
「お、おい、マールそこまでで……」
マールの追い打ちをかけるような言葉に、ロイドはまずいと思ったのか、やめさせる。
案の条、イリスは項垂れてしまった。
「…駄目ね……あたしって……」
「あー……」
ロイドはやってしまったと言わんばかりのに左手で顔を覆う。
「ミーシェも守れないで…勝手に諦めて…シェリアに元気付けてもらったのに調子に乗って…みんなのこと馬鹿にして……こんなことになって……」
「だ、大丈夫だって……!イリスは頑張ってるじゃねぇか!」
ロイドは落ち込むイリスに必死にフォローをする。しかし、イリスは今にも泣きそうな顔になっている。
「泣いちゃ駄目だよ、イリス。」
「え……」
突如、マールがイリスに真面目な口調で言葉を投げかける。この時のマールは真剣に話している証拠だ。
「泣きたいのはマール達の方だよ。イリスはマール達を見下してるもん。」
「……」
「お、おいおい!マール!」
さらにマールの追撃。ロイドはマールの予想外の行動に慌てた。
イリスがこうなったときは、元気付けるために皆で慰めるのが昔からの習慣だったのだ。
「今だけじゃない、ずっと悲しかった。魔族の一件があってからマール達には一切頼ろうとしない。それなのに、意識のないミーシェやほとんど関わりのないシェリアさんに頼ろうとするんだ。
きっと仲間だと思ってくれてないんだね。」
「ち、違っ……そんなこと……」
イリスはまた泣きそうになる。
「仲間じゃない」。今のイリスは何よりもその言葉を投げつけられるのが痛かった。
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