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「ウプッ……!」
「うおっ!?きったねぇな!!吐くんじゃねぇぞ!」
『ゴクッ』
「飲み込んだ!?」
それは船の上だった。俺は日本でも陸地に囲まれた地域に住んでいたため、船に乗るということは初めての経験だった。
五大貴族を含めたお偉いさんが乗るということで船も大きく豪華なものになっている。
そして楽しみ過ぎてテンションがハイになりうろうろし過ぎた俺は今見事にグロッキー状態だった。
船が大きくて揺れにくくとも酔うもんは酔うんだよ。
くそっ、まさか俺が船酔いするタイプだったとは…!
「ちょっと大丈夫なの?」
「部屋で横になってた方が…。」
やめろ、心配しつつも距離を取るんじゃない。吐かないって。余計に傷付くわ。
風に当たりながらじっとしていたら良いと思っていけど、やっぱり体質には勝てないようだ。
うっ、もう駄目だ…!
「部屋……戻る……」
「早く行きなよ。」
「……」
ウェルの気持ち悪いものを見るかのような冷たい視線。そして労わるどころかオブラート一枚すら挟まれていない突き放すような言葉。
あからさまに気持ち悪がってんじゃないよこの野郎!
船内廊下は高級感あふれる赤一色に染められていた。さすがにレッドカーペットではないが、その真ん中を闊歩しているだけで優越感が湧いてくる。
『ギギギギギーー』
「うぉっ…ぷ」
海が船を揺らし、俺を社会的に葬ろうとしている。何故?何故大きい船なのにこんな時に限って揺れるの?
あー、そもそも何で俺こんな目にあってんだっけ?わけわかんなくなってきた。
部屋にたどり着いた俺は覚束ない足取りでベッドに歩み寄り、顔から飛び込んだ。
そうだ、せっかくだから思い出そう。気を紛らしたり眠ったりできるだろ。
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