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「魔族の拠点は見つかってないのか。」
「ああ。誠に残念だがな。」
「幸先悪いな…。」
別のことで気を取られることが無くなったのに、さあやるぞという時に情報が少ないから対策しようにもできないな。
「だが可能性が高い場所ならある。」
可能性?
「海を取り囲む四つの大陸の間に幾つもの島がある。その中のどれかであろう。」
「どれかって…島いくつあるんだよ…」
俺が悪態をついてしまうのは仕方ないと思う。
四つか五つの島があるなら適当に名前をつけて普通に島として扱うことができるだろう。
だが、実際は地図上で見て細かい島がおよそ五十ほどもあるのだ。それも大洋に散りばめられているもんだから領土問題も起こりにくい。
ある一国が領土権を主張なんてしたら三国を敵に回してしまうからな。
「だが無名の島を拠点にする可能性は高いかもな。何も無いから無名の島なわけで、カモフラージュになる。」
「そうだな。かつて栄えた民族が滅んで廃島になったところもあるからな。」
うーん…だけどなんの証拠も無しに推測しても終わりが見えないな。
『…ハァ……』
父子でため息を揃えるなんてしたくなかった。
「旦那様、エル様、新しいお茶をお持ちしますね。」
「あ、うん。」
マリーがティーカップを下げる。あれ?さっきもおかわりした気がする…何杯目だ?
「で、エル。本題なんだが…」
「今まで本題じゃなかったんですか。」
「途中で話が逸れたのだ。フロール王国のくだりの続きだ。」
俺はときどき敬語に戻る。癖が抜け切れてないんだろう。
…まぁ、ミーシェさんとイリスさんのこともあるし、まさかあれが本題じゃないなんてことはあるまい。
「まず、本件の中で私たちがスローラル王国を気にかける必要性は無いのだ。」
「…どういうこと?」
「この国に関しては、ギルドだけで治安を保てるということだ。」
なるほど。この国は手強い魔物ばかりが生息する魔の区域が王国南部にあるからな。強いギルド員になるために外国から移籍した人も多い。
南部を拠点にするギルド員がパンクしそうになっている問題を逆手にとって役に立つときが来たわけだ。
「自国愛を問われることもあるやもしれんが、一蓮托生を要する今そんなことを言っているわけにはいかない。魔力が高くとも私たちは温室育ちだ。死線に慣れていない。
だから、常に危険と戦うギルド員に任せる。」
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