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「…ん?じゃあ俺たちは?」
「渡れ。外国に。」
「おおぉ!?」
いっけね。胃の中の紅茶吹き出すところだった。
「え…移住する感じっすか。」
「何だその口調は…。まあいい、行くのはお前だけだ。アルは優秀だが卒業できるレベルでもない。私はもちろん任された区域の民を統治せねばならん。」
「あー、そうっすね…。」
「それやめろ。」
百獣の王に崖から突き落とされる気分だが、いかにも合理的な考え方だな。国家間の戦力の差を無くそうなんて三十年前では考えられないことだ。
ましてや、この世界は四つの大国のみで占められている。ニューセンス王国なんかは少し複雑らしいがな……。
国の数が多く、実質アメリカが覇権を握る戦争の絶えない地球ではもはや異次元の話だ。
ん?『渡れ』?
「えっと、どの国に?どんな手段で?」
「どの国かはまだ断言できないが、手段は船に決まっているだろう。」
「え、船?ふね?」
「……何故二度聞いた…そうか、お前は船に乗るのは初めてか。」
そうだ。俺は地球のときでもこの世界でも船に乗るのは初めてなんだ。
おぉ…!テンション上がった。
「ふう……お前にもまだそんな幼い一面があったか。」
「父さんもな。」
「なっ…!?私がいつ子どもっぽいというのだ!」
「母さんにからかわれているとき。」
「なっ…」
母さんに論破され、誤魔化すように口に運んだティーカップの中身が空で「あっ…」てなる瞬間なんかもう…ね。
「まぁ、最も若気があるのは母さんなんだけどね。」
「はぁ…」
父よ、少しばかりシワが増えたのではないか?
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