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「ごめんなさいです。機嫌を直して下さい陸也さん、もう着きますから。住所は、この辺のはずですー」
助手席に乗っている直子は、甘えた口調で言った。私は知っている。この女は誰からも好かれたい、強かな女だ。
「見ろ。あれじゃないか? 随分と大きなお屋敷だなぁ……」
隣に座る冬馬の声に、私も視線を前方に移した。驚いた。このご時世にまだ江戸時代のような家屋があるなんて……。
日本特有の天井が低い、横長の屋敷。左右には、大きな柳の木が覆うように何本も植えられていた。
「ひやぁ、幽霊屋敷みたいじゃないか……いやだなぁ。はぁ――」
「茂、ブツブツ言っても仕方ないだろう。今回、お前は根性を叩き直せよな? 車を庭に停めるぞ」
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