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「あ、そういえば、万基の家ってここから近いん?」
「え、いや、あんまり近くはないかな。
電車も近くにないからバス通だしね」
突然の質問に、驚く。
どうやら彼に話の流れなどないらしい。
根來の止まらない口は、次々と話題を変えた。
「そうなんや……。
近かかったらこの辺案内してもらおと思っとったんやけど」
「あ、そうなんだ。
ごめん、俺もこの辺よく分かんないや」
「あー、別ええよ!
俺が勝手に思とっただけやけん!」
そう言われ、「ごめん」ともう一度付け加えて言葉を切る。
自分なりに話を打ち切ったつもりだった。
それに、家が遠いのは事実だが、この辺をよく知らないというのは嘘だ。
この高校は、県内でも賑わっている地域にある。
中学の時、この辺に遊びに来たことは何度もあった。
嘘をついたのも、話をこれ以上続けたくなかったから。
しかし、根來には通じなかった。
「あ、じゃあ万基の家ってどの辺にあるん?」
やっと切れたと思った会話が、再び再開される。
真顔に戻ってしまった表情を、再び笑顔に変えた。
「俺ん家は……G市の端っこだよ。
周りに何もないから説明しにくいけど」
「お! 偶然やな!
俺もG市に住んどるんよ!」
「え、じゃあ中学どこ?
G市って俺が通ってた所しかないはずだけど」
…………あ、しまった、つい。
話をやめたいと思っていたはずなのに、自分から話を振ってしまった。
根來は、嬉々として答える。
「あんな、俺の父ちゃん転勤族やねん!
だから中学は北海道居たんやけどな、春休み中に引っ越して来たんやー」
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