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「へぇ、そうなんだ」
「おう!
ここにも卒業するまで居られるかわからんのや」
「ああ、そうか」
大変だね、そう言おうとしたら、ちょうどチャイムが鳴った。
時計の針は、1時50分を指している。
どうやら、教室での集合時間になったらしい。
ほとんどの席が埋まっていた。
「お、担任女やん!」
根來の言葉に前のドアを見ると、ちょうど担任らしき人が入ってくるところだった。
肩より少し長いストレートの黒髪に、薄桃色のスーツを着ている。
彼女は教室をざっと見回してから教卓に立った。
「あれ、まだ来てない子がいる。
えーと、そこは……まあ、もうすぐ来るでしょう。
皆さんこんにちは、担任の清水です」
残念だ、担任は男が良かったのに。
俺がそう思ったと同時に、横から元気な声が聞こえた。
「清水先生よろしくお願いします!」
根來だ。
その独特なイントネーションが、耳につく。
「ええ、よろしく」
薄い化粧の中で、一ヶ所だけ自己主張の強い唇が弧を描いた。
俺の頭の中に、社長秘書が思い浮かべられる。
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