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「お! 榊原(サカキバラ)!
なんだお前一人なのかよー」
横断歩道を渡ると、同中の顔馴染みがそこにいた。
横にはそれより背の低いおばさん……母親だろう人が並ぶ。
俺はどう答えるか迷い、少し間を開けて口を開いた。
「ほら、うちの親忙しいからさ」
母親に挨拶をして、足早にそこを離れる。
一緒に行く気にならないのもそうだが、人に気をつかうのが面倒なのだ。
態度が悪いと、そこらの親どもはすぐ指を差す。
「やっぱり、あそこの親は放任だから」
聞き飽きた台詞は、既に聞き流せるほど軽くはないものだろう。
校門を過ぎると、高校教師の指示に従い進む。
通路通りに人の波ができていて、道に迷わなくてすんだ。
どの家庭も、親がついて来ているようで、人の隙間を縫って進むのは俺だけだった。
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