終末へ

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少年は、闇にまみれていた。 目の前の光の世界に、加わろうとはしなかった。 その光は、枯葉達の燃え盛る山であり、老若男女はやんやのお祭り騒ぎをしている。 しかし、地べたに座ってげらげら笑い合うだけのことだ。 ーー少年は、空を見上げるがそこに星空はなかった。 いや、もはや空という形容は不適切。錆びっぽいパイプや鉄板が、めちゃくちゃに張り巡らされていると『言われる』、天井。 少年の目に、火の明るさで、天井が、サビっぽく灰色に見えた。ぼんやりと。 人間が地下で暮らし始めて、これで五百年と二年。 そのせいで、闇の中、光を見ない人類の目は退化して悪くなっていた。 もう、人を顔の特徴で識別する時代は終わっている。 判断材料は、耳と気配と匂いと髪や手の感触が主だ。 男性女性の美しさだって、声の美しさと、基本的に朧に見えるスタイルで判断する。 目が悪くなったので、ダンスを楽しむという習慣は無く、キャンプファイヤーの前に座って、雑談をするだけ。 しかし、コミュニケーション能力も進化したのか、笑は絶えない。 そして、そこにいる人々が食べているのは、少ない発電で明かりを作って育てるサツマイモとか、もともと日陰が好きなキノコとか、苔の仲間とか、小麦。 五百年前に、唐突に世界が滅んだ時から、世話になってる植物達だ。 もともとこの、現『地下都市b25階・最下層』は、地球上の増え過ぎた人口分の食料を少しでも養うために設置された、『栽培エリア』の一つ。 電力ーーそれがあるなら光と熱と、そして水と食料が溢れる空間なのだ。 現在、この地下都市の人口は三百人。 もはや、都市とは言えない人数ではあるが、快適と言えるほどに暮らすには、この人数が限界だ。 何より、この地下都市以外に人類が生存しているかというと、否となる。 それが都市と言われる所以であるが、都市というよりも、世界ーー人が生きることを許された空間と言える。
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