終末へ

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ーー少年は、枯れ草を編んで作った服を整え、切れずに伸び放題のボサボサな痛んだ髪を掻きむしった。 しかし、不潔ではない。 この世界は、風呂もないし、金属器は滅多に使われるものではないし、綿すら存在しないのだ。だから、彼の容姿は一般的だ。 馬鹿馬鹿しいやーーそう呟いて立ち上がった少年は、光に背を向けて、帰路についた。 この都市の住民の大半が参加する祭り(不定期なもので、今回の規模は特に大きい)だったが、彼は明日の歴史のテストの勉強をしなければならなかった。 紙が存在しないこの都市では、歴史は口頭で語られていく。そのため、テストでは聞かれた質問に、言葉による回答をするという形式だ。 点数制度は無く、審査員(教育課程を終了した大人)が良し悪しかを言って、それで合否を決める。 少年は、家にいるであろう祖母にその練習の手伝いを求めようと、少し早足で、暗い道を、脳内にイメージの地図を浮かべながら、裸足で歩いた。 * * * ーー少年は語る。 「およそ五百年前、人類の文化は、隆盛を極めていた。 しかし、突如発生した小型の、ブラックホールと呼ばれる現象によって、一瞬で壊されたと言われる。 そのブラックホールは、安全と証明されたはずの量子加速器による量子衝突実験により、生まれたとされる。 刹那的だが、光を飲み込むほどの重力が、地球にかかり、その時に生命のほとんどが滅んだという。 以上は先人たちによる仮説に過ぎないが、それを証明する証拠はある。 ーー地球は、昔、いま以上に回っていたとされる。それが、世界が滅んだ日に回転速度が極端に落ちた。 それは、ブラックホールが起こした重力の影響とするのが通説だ。 そして、大噴火、津波。 時点速度の低下とブラックホールの重力と月の急接近によって引き起こされたと言われるそれは、残された生物のまたもや大半を滅ぼしたようだ。 しかも今。地球は、ブラックホールの重力のせいで金星の軌道の近くまで移動して、公転を行っている。 ブラックホールで引き起こされた、太陽への接近という現象は、今も続いていて、かつて寒冷だった地下は、少しづつ過ごしやすくなっている」 暗闇の中で祖母は頷いて新しい質問を投げかける。 「では何故、人は生き残れたの?」
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