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彼は、さらりと答える。
さっきの『りょうし』とか『ぶらっくほーる』とかと同じように理解していない、暗唱した言葉を用いて。
「それは、科学がなくなった今では、証明がほとんど不可能な事象。
助かった人類最後の生き残り十一人は、潜水艇の中のドイツ人研究者とアメリカ人技術者だった。女性が四人、男性が七人だったとされる。
彼らは、プエルトリコ海溝を『海底探査機12500』により、その深奥の生態調査のために、下っている最中に、被害にあったという。
誰しも、無事では済まされなかった。
みんな、潜水艇の中でごちゃごちゃに叩きつけられ、どこかしら骨は折れたし、酷い切り傷を負った人や、片目を失明した人もいた。
それでも、誰一人死ななかったのは奇跡だろう。
潜水艇の壁がジェルクッション式だったのが、功を奏したのだろうと言われているが。
しかも、海底火山の噴火にも巻き込まれることはなかった。
潜水艇も、海溝の形に沿って引っ張られた為に、何処かの壁にぶつかることはなく、故障はなかった。
そして、浮上後も、ブラックホールが発生したヨーロッパの気圧が瞬間的にゼロに近くなったことによる、地球全体の激しい気候変動と寒冷化と低気圧による体調不良に晒されたが、竜巻にも、幸い夏だったから寒波にもさらされることもなかった。
何十層もの厚い鉄の壁が囲っていたこの地下都市だって、最初、入り口付近の都市の破損が尋常ではなかったとされるのに。
単純に、地下深く、地球の自転軸に近づいたことによって、自転のストップで受ける慣性の反動を弱めたと思われるが、それだけしか推測できることがない。
ただ、確実に言えることは、僕たちは神の御意志により、救われた。
だから、今だって僕らは天に祈りを捧げることを忘れていない。いや、この世界が滅ぶまで、忘れてはならないだろう。
生き残った十一人は、先ずは島々を転々として、雨水を飲み、津波で裸になった畑に奇跡的に残った袋入りのパンなどの食物を食べて、アメリカのフロリダの海岸にある、地下都市を目指した。
しかし、海は、月がブラックホールの重力で接近している影響で荒れていて、命からがらたどり着いた。
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