美術室

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 ―あたしの中学生時代は冴えないものだった。  成績は、塾に行っていたおかげでさほど悪くはなかったけど、これといって良い点は取らなかったし、所属していたテニス部でも、いてもいなくてもいいような存在だったと思う。大して上手くなかったし。  多くはない友達も、心の底から信用している子はいなかった。移動教室や休憩中、一人にならないために付き合っていたと思う。  たまには楽しいなと思うことや嫌だなと思うこともあったけど、全体的に見れば平凡な変化のない生活だった。    そんな3年間を過ごした結果、悲しいことに残ったのは卒業証書と皆勤賞だけだったのだ。  高校からは自分を変えようと頑張った。  セミロングの髪にパーマをかけて、アイプチして、マスカラして、(服装点検の時以外)スカートをひっつめて。初対面の子にも、(陰キャ以外)なるべく自分から積極的に話しかけたりした。  部活には入らなかったけど、コンビニでバイトして、そのお金で友達と遊びまくった。プリクラ撮って、パフェ食べて、カラオケ行って、服買って。  (塾は高校からは行かなかった。試験前だけそこそこに勉強した)  ―必死の高校デビュー効果のおかげで今あたしのケータイにはたくさんの名前だけが入っている。  名前だけ。  やっぱり、人間の性格なんてそんな簡単に変わるものじゃないんだ。    中学生のときと結局何も変わらない。  浅い、表面だけの友達づきあい。  追試に引っかからない程度の成績。  誰からも妬まれないけど、特別に好かれもしない。  いてもいなくてもいいような存在。      そんな感じで高校2年目の春を迎えようとしていたころ、児島という存在が、あたしの目の前に現れたのだった。
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