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そんなわけで毎日のように児島と美術室へ通うようになった。
別に付き合っているわけでもないのにこうして一緒にいるのも妙と言えば妙かもしれないけれど。
最初にあたしが見た児島の絵は、訳のわからない記号や図形をキャンバス上に適当に組み合わせました、みたいな抽象画だった。ピカソ的なやつだ。
だけど、適当に描いているように見えて、色の重なりとか組み合わせ方のセンスが抜群にいいことに驚いた。
次に描いたのは、全くジャンルの違う絵だ。あっさりとした水彩で描かれた、海とクジラの絵だった。これもまた、透明感があってすごく素敵だった。
そして、今は油絵。
画材も描き方も全く違うのに、児島の描く絵にはいちいち感動させられる。彼の手には魔法がかかっているのかなって思うくらい。
もちろん、絵も好きだけど、描いているところを見るのも好きだ。
がりがりの骨が浮き出た手首を動かして、筆を動かすところ。真剣に絵と向き合う横顔。(さらに言わせてもらえば、彼の首の筋が浮き出るところを見るのが一番好きだ)
あたしもそんなに喋るのが得意な方ではないし、児島は得意以前の問題だから、2人が会話を交わすことが少ない。
だけど、言葉以外の方法でコミュニケーションをとれるっていうことを学んだ気がする。
通っているうちに、あたしは児島がますます好きになったし(不潔さも気にならなくなった)、児島も、あたしのことを少なくとも嫌いではないと思う。それは、彼の表情を見ていればわかる。
言葉を交わさなくても、一緒にいるだけで十分だなって感じるようになった。
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