キスフレの裏側 Vol.5 (モリリン編)

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他の客の笑い声や、会話。そして、食器が立てる陽気な音楽が、店内に響いている。 私は、次に何を言えばいいのか、頭を悩ませていた。 一目ぼれです。 という言葉も、 好きになりました。 と言う言葉も、何処か違う気がした。 運命です。 運命の出会いなんです。 と告げたところで、彼は私に不信感を募らせるだけじゃないかと思えた。 でも....本当に運命。感じてるんです。 「森元さん。」 永澤さんが私の名前を呼んだ。 「そろそろ、出ましょうか?」 彼が、終わりの時間を告げる。 「...はい。」 結局二人きりになれたとしても、進展するはずも無く。 勇気を振り絞った言葉を告げても、 彼の気持ちは揺れ動きもしない。 そしてまた明日も代わり映えの無い職場で、 書籍に囲まれた日々を送るのか.....。 通りに出て、永澤さんはタクシーを呼び止めようと手を伸ばした。 その背後に私は近づき、通りにやって来るタクシーを捜そうと周りを眺める。 すると、先ほど伸ばした手を降ろし、私のほうへゆっくりと振り返った。
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