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他の客の笑い声や、会話。そして、食器が立てる陽気な音楽が、店内に響いている。
私は、次に何を言えばいいのか、頭を悩ませていた。
一目ぼれです。
という言葉も、
好きになりました。
と言う言葉も、何処か違う気がした。
運命です。
運命の出会いなんです。
と告げたところで、彼は私に不信感を募らせるだけじゃないかと思えた。
でも....本当に運命。感じてるんです。
「森元さん。」
永澤さんが私の名前を呼んだ。
「そろそろ、出ましょうか?」
彼が、終わりの時間を告げる。
「...はい。」
結局二人きりになれたとしても、進展するはずも無く。
勇気を振り絞った言葉を告げても、
彼の気持ちは揺れ動きもしない。
そしてまた明日も代わり映えの無い職場で、
書籍に囲まれた日々を送るのか.....。
通りに出て、永澤さんはタクシーを呼び止めようと手を伸ばした。
その背後に私は近づき、通りにやって来るタクシーを捜そうと周りを眺める。
すると、先ほど伸ばした手を降ろし、私のほうへゆっくりと振り返った。
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