キスフレ特別版 Vol.8「ウェディング・ロード」 

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☆☆☆ 「もう直ぐ挙式始まるぞ。」 ....と、小栗が声をかけてきた。 胸にピンク色のポケットチーフを差し込んだ、シャンパンシルバーの上質なスーツ。 髪はほんの少しだけワックスで脇を固めてるせいか、 いつも以上に顔立ちがシャープに見える。 「ほら、早く」と言い小栗がベンチに座ったままの私に手を差し出す。 会社の同僚である皆元 みどりちゃんの挙式がもう直ぐ始まる。 彼女は、もう直ぐ「阿部さん」になるんだ....。 私は淡いピンク色のシフォンドレスを身に纏い、 肩に掛けていたスパンコールが散りばめられたラベンダー色のショールの裾を掴んで、 小栗の差し出した手を握り、立ち上がった。 「今日は、かなり日差しが、照り返して暑いな。」 小栗はそう言って、冷房の効いた式場のウエイティングフロアから、 緑の生い茂るチャペルまでの道を颯爽と歩き始めた。 「みどりちゃん、体調、大丈夫かな...」 お腹の大きな彼女が、照りつける太陽の下で長時間立ったままでいるのは、体の負担になるだろうと思えた。 小栗が、黒い日傘を取り出して私に差し出す。 途端に、光が遮られて暗い影が生まれた。 「おまえも気をつけろよ、ぶっ倒れないようにさ。」 小栗が微笑み、彼の差した傘の中に一歩足を踏み入れた。
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