一人ぼっち

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 「...何があっても、お前を一人にしないよ。だから、泣かないんだよ。」 その優しい言葉は、私の生きる糧だった。 私は、父を戦で亡くし、母は幼い私達を守り死んだ。私の家族は兄だけになってしまった。戦から遠ざかる為、田舎に疎開してきたが、兄は都で仕事に行くことが多かった。 その為、家では、私だけ...。  兄は、両親代わりになり、一生懸命、育ててくれ、和歌や琴など習わせてくれた。いつ、嫁に行っても構わないようにと。 兄が活躍する度、嬉しくも、いつも怖かった。そんな日は、兄にいつも甘えて、困らせていた。 兄は、笛吹きの名手と謳われ、貴族の方々にも、よく屋敷に呼ばれて、奏でていた。笛の音の美しさだけでなく、兄の容姿の美しさ、気さくで、親身になって話を聞いてくれるそんな所が都の姫君達を虜にしていたようで、度々、文が届けられた。 「兄さん。また、手紙が来ているわ。どうして、仕事に行く度に、女性からの手紙が増えていくのかしらね?」 呆れる様に、私は言うと、兄は私の頭を撫でて言うのだった。 「巴より、可愛い女の子はいないさ。それに、お前が嫁に行くまでは、俺がずっと一緒だ。」 「もう、兄さん。はぐらかさないでよ!」 と口では怒った口調ではあるが、兄が居れば何もいらない。そう思ってた。いつか、兄がお嫁さんを娶ることになっても、兄の傍に居たいと思っていた。  兄が活躍すれば、活躍するほど、名も挙がり、名誉なことであるが、どういう訳か、私の噂が都に広がっていた。 何でも可愛い姫君で、琴や笛が上手と噂になっていたらしく、私の姿を一目見よう、お近付きになりたいと思う者がいるらしく、どうしてか、私にまで恋文が寄せられるようになっていた。正直言って、何の嫌がらせだろうと思っていた。 私の願いは、ただ一つ。 戦で活躍したり、その暮らしで得た贅沢な暮らしをしたいと願ってはいない。兄と静かに、ひっそりと暮らしたいと願っていた。
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