一人ぼっち

3/8
前へ
/27ページ
次へ
私は、兄さえいれば、何も要らなかった。 その大切な人でさえ、奪われた。  「...巴殿!風雅殿が...風雅殿が...」 とても寒い日だった。今宵の月は、とても美しいが、儚さを感じさせていた。兄に逢いたいと心から願っただけなのに...... 「...亡くなりました...」 とても辛そうに告げられた。 「えっ...?!」 耳を疑いたくなったが、その方は、兄の親友で、悪い冗談を言う様な方ではない。 「...主が都の屋敷に戻る途中、盗賊に襲われ...」 その先の言葉を聞くのが、辛かった。 「...主を護る為、風雅殿は...」 「イヤー!!嘘よ...兄さん、帰って来るって約束したの...嘘でしょ」 「...真実です...巴殿...」 信じたくなかった。悪い夢を見ているだけ、そう思いたかったのに、やっぱり現実だった。 「...イヤー!!...信じない...信じたくない...」 泣き崩れた。 「...私だって、信じたくない!だけど、彼は...」 いつもの“大丈夫”の言葉を言い残し、果敢に盗賊に向かったらしい。 その話を聞いて、私の中で、何かが音も立てずに崩れ落ちた。 私は、壊れ、狂ったように叫びながら、家を飛び出していた。  「...兄さんの...バカ...」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加