一人ぼっち

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湖まで来た私は、泣きじゃくりながら、呟いた。 無情にも、水面に浮かぶ月は美しく、生前、兄が奏でてくれた時の月の美しさだった。 今にも、兄が 『巴!こんな所にいたのか?今夜は冷えるぞ!さあ、家に帰ろう!』 悲しそうに兄がいた場所を見つめる。 『巴、どうした?ああ、今日は月が美しい!月からお姫様が舞い降りて来そうだ...。そうだ!お前に笛を奏でてやろう!』 きっとそんな風に兄は言ってくれるただろ。 村の方から誰か走って来る。私の名を呼ぶ声が聞こえた。 「...兄さん?...兄さん、生きていたのね...良かった...」 何故か、その姿が兄だと思い、ホッとし意識が途切れてしまった。  「巴殿ー!!」 倒れる私を兄の親友が受け止めたのだった。 私は、夢を見た。兄と過ごした楽しい時間の夢を.....  目が覚めれば、近所のおばちゃんがいた。兄が死んだのは、夢じゃないと思い知らされた。 運ばれてきた兄の遺体。矢がたくさん刺さっていた。 だけど、兄は私の好きな優しい笑顔で笑っている。 「...兄さん...兄さん、起きてよ...」 まだ、兄が起きて、笑い掛けてくれる気がして、泣きながら兄にしがみつく。
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