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 目覚まし時計が不快な音を鳴らして、わたしは目を覚ます。  わたしがザムザ(*)だったら今頃、大きな虫になって、部屋から出られなくなって、家族からも拒絶されて、仕事もクビになるんだろうけど、どうやらわたしは無事らしく、濃くなってきた目の下のクマを、気のせいよ、気のせいよ、と言いながら化粧を施した。    仕事場に向かうため、電車に乗る。何年経っても、東京の満員電車には慣れない。  「アウシュビッツに向かう列車だって、こんなにギュウギュウじゃなかっただろ」と前の彼氏は東京都心のラッシュアワーについて皮肉を言っていた。  前の彼氏、前の前の彼氏、前の前の前の、嫌な気分になる前に、バックから携帯を取り出して、ネットの芸能ニュースを見ることにした。  *ザムザ・・・グレーゴル・ザムザ。カフカの『変身』という小説の主人公。仕事行きたくないなー、なんて思いながら眠ったら、次の日、巨大な虫に変身してしまった青年。
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