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けたたましい蝉の声が辺りを覆う。
太陽はすっかり昇りきり
日向になってしまったベンチで
清科 幸助(きよしな こうすけ)は、
暑さとうるささから目を覚ます。
「あーうるさいなもう」
幸助は勢いよく上半身を起こすと
目の前に広がる風景に目を疑った。
まだ夢の途中かと、
目を擦り、頬をつまむ。
「痛っ、え?いやいや」
念を押すように今度は
思い切り頬を叩いてみた。
「痛ーい、だから痛いんだって」
何度痛みを感じても受け入れられず、
幸助は頬をさすりながら、ゆっくりと立ち上がる。
「屋上か?いやでも、どこのだよ」
屋上にいることは分かったが、
地平線まで広がる澄んだ青空や
屋上に届かんばかりの青々しい木々に
見覚えは全くない。
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