『ルーム』第2集

第6話 やる気スイッチ

「そうだよ。仕事ってノルマをこなすだけではないと思うんだ。どうせなら自分を成長させたいじゃない？　仕事をして自分にもプラスにしていく。僕はね、できればこの会社の人間全員に社長になってもらいたいと思ってる」

「社長!?」

　何を言い出すのかしら、この人は。

　みんなも呆れたようにざわめき出した。

　龍禅はそんな周囲の態度を気にもとめずニコニコ笑って話を続ける。

「つまり、ひとりひとりが自分で仕事のプランを立てて、自分の生活を豊かにするために仕事を活用できる人間になって欲しいってこと。働かされてるんじゃなくて、働いてやってるっていうかさ。もちろん、ひとりでできないことはみんなや僕がサポートするよ。だけど今みたいな柴さんひとりに任せきりなのはよくない。柴さんも自分ができるからって安易に代わってあげることは上に立つ人間としてよくなかったね。それじゃ、いつまでたっても部下が育たないよ」

　だって、下手に育てて下剋上されたら困るもの。

　それに突き放したら、今の子達はついてこないよ。

　わたしが仕事をした方が早いし、その上感謝されて慕われるならいいじゃない。

　不貞た表情で龍禅を見れば、そんなわたしの心なんてお見通しなのか、彼はやんわりと微笑んだ。

　こいつ、やっぱりあなどれない。