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どう答えればいいのかわからなくて、途方に暮れてしまった。
だって、龍禅がそんなにまっすぐな好意を持ってくれていたなんて、思いもよらなかったから。
「……陽菜ちゃん、ありがとう」
「いえ、わたしは美織さんが来てくれて本当に嬉しかったです。だから、引っ越すなんて言わないでください」
「……うん」
夏頃には引っ越そう、そんなふうに思っていたから後ろめたさに返事が曖昧になる。
「……わたし、美織さんの隣の部屋ですから、何かあったら声を掛けてくださいね。それじゃ」
「うん、またね」
陽菜ちゃんは、かわいらしく手を振って、階段を下りて行った。
扉を閉めて、白い丸テーブルの上に御膳を置く。
小型のワインセラーから赤を一本とグラスを取り出した。
グラスにワインを注ぎ、カンッと瓶を相手に乾杯して、一口含む。
まるでスイッチを押されたみたいに、お腹がクゥッと切ない音を立てた。
「いただきまーす」と両手を合わせて、ハンバーグをおいしくいただいた。
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